トラック運送事業者の生産性の向上
新たな成長は、生産性の向上から
はじめに
日々の運行、そして大切なトラックのメンテナンス、本当にお疲れ様です!
さて、運送事業者が成長して行くためには、単に車両数を増やして事業を拡張すれば良いということではありません。同じ車両数、ドライバー数でも売上を伸ばし、利益を上げていくことで、確実に成長することが大事です。今回は、運送事業者の生産性を向上させる方法について解説します。
生産性向上の基本
1. 生産性とは何か
生産性とは、投入した資源と生み出したアウトプットの比のことを言います。運送事業者では、色々な生産性の尺度があります。最も簡単なのは、売上÷費用ですね。これが100%以上であれば、利益が出ており、未満であれば赤字だということです。
車両の運用に関わる生産性の指標であれば、車両の稼働率(実働率)、荷物を積んで走っている時間や距離(実車率)、車両の積み荷の状態(積載率)などがあります。
これらの指標が向上すると、同じ時間や距離を走って、入ってくる収入が増加するということになります。そこで、今回はこれらの3つの指標について解説します。
2. 稼働率の計算と向上
稼働率の計算は、以下のようにします。稼働率を時間で計算する方法もありますが、データの収集が難しいので、ここでは簡単な日数でのやり方を紹介します。
(車両を使用した日)÷暦日
例えば、9月であれば暦日は30日になります。このうち、1台の車両を25日使用すれば、25日÷30日ですので、この車両の稼働率は約83%になります。
稼働率を上げると何が良いかというと、車両には多くの固定費がヒモ付きます。例えば、車両の減価償却費やリース料、保険料、税金、駐車場代金、点検費用などです。先ほどの例でいうと、30日走っても25日しか走らなくても、これらの費用は変わりません。従って、この率は高い方がいいということになります。
会社全体の稼働率を計算するには、
(各車両の使用した日合計)÷(暦日×車両台数)となります。この中には、予備車も含みます。この数値は、月ごとに出して変化を観察すると良いでしょう。
稼働率を低下させる原因としては、次のようなものがあります。
- ドライバーごとに担当車両を固定しており、ドライバーが休むとその車両も動かない。
- 予備車両が多い
- 故障や事故が多く、修理や整備に入っている日数が長い
従って、向上策はこの原因の裏返しを行えばいいことになります。
- 1台の車両に複数のドライバーを乗車させる。例えば、「月~金に企業向け配送業務を行っている車両を使用し、土日に別のドライバーで引越業務を行う」などです。
- 不要な予備車両を売却する。「車両の定期点検や車検の際には、傭車でその業務を行う」といったやり方もあります。大型車1台に係る車両の固定費は、減価償却の終わった車両でも、税金や保険料、車検・点検費用などで年間40~80万円程度かかると言われています。傭車を使用したことで差益が1~2万円少なくなったとしても、こちらの方が有利だということが分かります。働き方改革の観点から、ドライバーの休日も増やさなければなりませんから、特殊車両でない場合には予備車に替えて傭車で対応し、ドライバーを休ませることも検討する必要がありそうです。
- 故障や事故が多い車両は、その原因をつぶす必要があります。「日常点検をしっかり行い、メンテナンスをしっかり行うことで、故障を減らす」「事故の多いドライバーにしっかりと安全教育を行い、事故件数を減らす」という当たり前のことをしっかりやることが大事です。
3. 実車率の計算と向上
実車率とは、車両の運行時間に占める「収入を伴う荷物を積んでいる時間」の割合です。これは、日報から数字を取ってこなければなりませんが、一部のデジタコでは、自動でこの計算をしてくれるものもあります。
実車率が低い状況とは、収入を伴わない運行時間(空車時間)が長いということになります。この場合、燃料代やドライバーの人件費、場合によっては道路通行料が掛かっていますので、なるべくこれを短くすべきということになります。
実車率を低下させる原因としては、次のようなものがあります。
- 荷役や待機に係る時間が長い
- 中・長距離輸送で、帰り荷を見つけられないことが多い
- 配送ルートが固定されており、最終配送先から車庫までの距離が長い
向上策には、次のようなものがあります。
- 荷役・待機時間の短縮
荷主と交渉して改善してもらうのが、一番です。交渉のコツとして、「時間を短くしてもらう」か「運賃を上げてもらうか」の2択でせまると、両方は断りにくいということで、改善に結び付きやすくなります。
自助努力として、荷役時間を短縮するために、テールゲートやパレットローダーのような省力化機器を導入することも効果的です。
貨物の保定には、ロープの代わりにラチェットのついたベルト荷締機(ラッシングベルト)を利用することで、短時間で確実な貨物の保定ができます。
ベルト荷締機 - 帰り荷の確保
帰り荷が見つけやすい方面と見つけにくい方面があることは、仕方がありません。その方面への輸送が定期的にある場合には定番の帰り荷を見つけておくと良いでしょう。それが見つからない場合、空車率を見込んだ運賃設定にしておく必要があります。 - 配車の合理化
配送ルートが固定されていて、実車率が低下している場合にも、荷主と交渉してルートを変更することが一番ですが、最終納品先周辺で行える近距離の横持ちや他車の宵積みといったエキストラな仕事をその車両につけることで、実車率は向上します。
4. 積載率の計算と向上
貸切車両の場合には、積載率は問題ありませんが、積み合わせの場合には、この積載率が収益性に大きく関わってきます。積載率の計算には、以下のような方法があります。
積載した実際の重量(容積)の月間合計÷その車両の最大積載重量(容積)×運行回数
この計算には中々ハードルが高いものがあるかもしれませんので、積み合わせの場合には収受料金で見た方が簡単に把握できます。積み合わせに係る車両の収受料金合計から、1台当たりの月間収受料金を計算できます。これが下がっていれば、稼働率か積載率が低下している可能性があります。
積載率低下の原因は、次のようなことが考えられます。
- 荷物が減った、又は、車両数が多い
- 集荷地点や配達地点が散らばり、積載よりも時間が優先される
- 高積みできない貨物が多い
その改善策には、次のような方法があります。
- 積み合わせを行う車両の台数をなるべく減らし、浮いた車両に別の業務を行わせる。また、車両数が多いのは、配車が甘くなっている可能性があります。方面別に固定的に車両を使うのではなく、臨機応変な配車を心掛けましょう。
- 仕事の取り方に問題があるかもしれません。効率を妨げている荷主については、運賃を上げることも必要です。また、配車の方法を変えることで改善することがあります。他業務を行っている車両で離れた集荷先の近くを運行する車両があれば、集荷だけその車両で行い、後で積み替えする方法もあります。
- 高積みできないような貨物には、パレットサポーターやフォールドデッキのような器具を使う方法もあります。また、メッシュパレットやロールボックスに収納して、収納具単位の料金としても良いでしょう。道具を使えないような場合には、無駄になる空間まで料金の対象にするという事業者もあります。適正な料金を検討しましょう。


社員の意識を変える
「生産性を上げようとしても、中々効果が上がらない」という声を聞くことがあります。色々と分析してみると、配車係やドライバーの改善意識に課題があるケースが多いです。
「配車係が複雑な配車を行いたがらない」、「ドライバーに稼ぐ意識が欠如している」という事例をよく見ます。運送業界に限らず、最近の若い人には、「賃金を上げよう」という意欲が希薄になっているという風潮があるとも聞いています。
それでは、どのようにして社員の意識を上げて、会社全体で生産性向上に取り組めばよいのかについて、考えていきましょう。
1. 達成感を持ってもらう
一気に難しいことをやろうとすると、結果が出ないために、やる気をなくしてしまいます。達成可能な小さな目標を、少しずつ達成していくことで、次への意欲が出ます。配車係やドライバーに小さな目標を持ってもらい、達成すれば、直接「ありがとう、次も頼みます」というように、声をかけるようにしましょう。
2. 共通のKPIを作る
KPIとは、Key Performance Indicator(重要業績指標)のことで、最終目標を達成するために必要な達成すべき指標のことです。例えば、倉庫における最終目標を顧客満足度の向上としたときに、「誤出荷率を0.01%にしましょう」という風に目標となる数値を設定し、この達成度がKPIとなります。
この指標が多すぎると、どれを達成すればいいのかわからなくなりますので、できれば一つにすることが望まれます。例えば、「今期の実車率を全社平均2%向上させる」というようなものです。これに沿って、それぞれの行動目標を与えます。配車係には、待ち時間や荷役時間の長い荷主との交渉、ドライバーには、運行ルートの見直し等を指示します。各個人の達成度よりも、全社の達成度を全員で共有し、達成すれば、喜び合い、達成しなければ、知恵を出し合うことで、生産性に対する意識は変わっていきます。
値上げとコスト削減
値上げとコスト削減の共通点は、その効果が利益に直接反映されやすい点にあります。例えば、平均で20%の値上げができれば、その値上げ分は利益改善に直結します。また、コストも20%削減できれば、削減した分だけ利益の押し上げ効果が期待できます。
一方で、値上げではなく、取扱量や受注件数の増加によって売上を20%伸ばした場合には、燃料費や人件費などの追加コストが発生するため、そのすべてが利益になるわけではありません。そのため、日頃から値上げについて顧客の理解を得られるよう、丁寧にコミュニケーションを取り、毎年少しずつでも価格を見直していくことが重要です。コストについても同様に、たとえ小さな金額であっても削減できれば、確実に効果があります。支出全般を見直し、無駄が無いかを継続的に精査していくことが必要です。
20%もの値上げやコスト削減を一度に実現することは難しいかもしれません。しかし、全日本トラック協会のアンケート調査によると、運送業全体の利益率は1.0%にとどまっています。この現状を踏まえれば、たとえ1%、あるいは0.5%の値上げやコスト削減であっても、経営改善に大きく寄与するといえます。
値上げとコスト削減の効果

コスト削減は、変動費、固定費それぞれを20%ずつ削減したものと仮定
まとめ
生産性の向上というと、何か難しいことに挑戦するように感じるかもしれませんが、「小さな改善」の積み重ねが大事です。その努力の成果を数字で見るために、稼働率や実車率、積載率を把握しておきましょうということです。利益率の低い運送業界において、このような「小さな改善」を日々行っているかどうかが、会社の存続、発展につながります。
どんなに小さな効果でも、それを積み重ねれば、大きな効果につながります。生産性の向上には長い時間を要するものが多いですが、できることから、少しずつステップアップしていくことを心がけましょう。
今からできること
すぐにできることを3つ提案します。
- 自社の生産性の指標を把握しましょう。
デジタコを使っている場合には、それらの指標を算出する機能があるのか確認しましょう。なければ、まずは出しやすい稼働率から計算してみましょう。 - 生産性向上のネタを探しましょう。
時間軸で見ていくと、変化が分かります。例えば、「昨年と比べて修理を行った車両数が増えている」といった場合、事故件数が増えていないか、部品やオイルの交換が適正に行われていないかをチェックします。これらが、改善のネタになります。「安全教育を強化しよう」「日常点検を強化しよう」という風に、行うべき活動が見えてきます。 - 生産性向上を日常の会話にいれましょう
「昨日の配車はナイスだったね」や、「●●センターの待ち時間は、今日はどうだった」という風に、日々の社員との会話に生産性に関する話題を取り入れていきましょう。全員が意識することで、少しずつ歯車は回っていきます。

