2026年4月施行、運送業界の新ルールとは
許可更新制実施に備え、今こそ自社の“健康状態”をチェックしましょう
はじめに
日々の運行、そして大切なトラックのメンテナンス、本当にお疲れ様です!
パーツの交換でトラックの寿命が延びるように、会社という組織も適切な「メンテナンス」が必要です。今、運送業界は1990年(平成2年)の規制緩和に匹敵する、大きな転換期を迎えています。
2026年4月から、私たちの事業に直結する2つの重要な法律が順次施行されています。今回は、特に注目すべき「事業許可の更新制」と「荷主との関係の変化」について解説します。
一つは、物流効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)で、荷主の責任について大きく改正されています。もう一つは貨物自動車運送事業法で、注目すべきは事業許可の更新制が導入されたことです。
これらの法律の改正は、運送事業者をとりまく環境の変化に対応し、我が国経済の基盤の一つである輸送力の維持・成長を目指すために行われています。
輸送力不足が現実に?
トラック運転者の有効求人倍率は、年々高まっており、現在では、全職業平均の倍以上となっています。
「募集をかけても、来ない」という経営者の声もよく聞かれます。
では、何故、このような事態になったのかというと、以前には、全産業平均と比べて賃金が2割安く、労働時間が2割長いという状況にあったからです。働き方改革法が2024年から運転手に適用されるようになり、少しは改善しましたが、まだ全産業と比較すると厳しい状況です。
一方、運送業の就業者数は、横ばい状況ですが、労働時間は減少しています。その中で、残業が減ることにより手取り賃金が減ったドライバーは、他社に転職してしまう傾向があります。経営体質を改善できずに、賃金を上げられなかった結果、「トラックはあるのに、ドライバーがいない」状況となった会社が倒産に追い込まれるケースが増加しています。ドライバーの雇用環境の改善は、社会的課題であるとともに、運送事業者の生き残りをかけた課題でもあります。
トラック運転者の有効求人倍率
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トラック運転者の年間労働時間の推移
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トラック運転者の年間収入額の推移
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荷主が変わる?「物流効率化法」の改正
改正された物流効率化法では、荷主には荷待ち時間や荷役時間を削減する義務があることが明確にされるなど、運送事業者の労働時間短縮に協力することが求められています。
特筆されるべきは、「特定荷主」として、多くの貨物を入出荷する荷主については、物流担当役員(CLO)の設置や、中長期計画の作成とその報告が義務付けられたことです。ここでいう「計画」とは、物流費を削減する計画ではなく、荷待ち時間や荷役時間の削減、積載率向上といった内容が求められています。
しかしながら、多くの荷主では、何をしていいのかが分からない状況となっており、荷主に向けた「CLOは何をすべきか」といったセミナーが多く開かれています。
以前には、運送事業者の色々な要望に対して「聞く耳を持たない」荷主が多かった中、今、荷主は、運送事業者の言葉に耳を傾けざるを得ない状況となっています。この特定荷主制度を後押しするものとして、以前より行われていた「トラック・物流Gメン」による働きかけがあります。これは、荷待ち時間が長いといった荷主に対して国土交通省の職員が改善を求める制度で、繰り返しの働きかけに応じなかった場合、社名公表等の措置を講じます。さらに、運賃面では、公正取引委員会が「価格転嫁」に応じない荷主の摘発も行っております。
つまり、運送事業者には、取引条件や運賃について、適正化するチャンスが訪れているとも言えます。
最も重要!貨物自動車運送事業法の改正
今回の改正の大きなポイントは、
- 事業許可の更新制の導入
- 適正原価を下回る運賃及び料金の制限
- 委託次数の制限
- 違法な「白トラ」に係る荷主等の取締
の4点になります。
この中で、事業者にとって最もインパクトの大きいものが「更新制の導入」です。許可を更新できなくなれば、事業を続けていくことができなくなるわけですから、当然とも言えます。
更新要件については、詳しいことはまだ発表されておらず、2029年4月を目途に開始されるということは分かっています。現在のところで推測される要件は、「法令順守状況」「安全確保への取組」「財務状況」「労働者の適切な処遇」が含まれるであろうということです。
「法令順守状況」や「安全確保への取組」、「労働者への適切な処遇」は、トラック協会の適正化事業巡回指導の項目に入っていますが、「財務状況」は入っていませんでした。財務内容は短期間で改善できるものではありませんので、早くから取り組む必要があります。また、「労働者への適切な処遇」についても、社会保険の加入といった内容よりも踏み込んでくる可能性があります。
参考までに、既に更新制のある旅客自動車運送事業について中部運輸局が出している文書では、以下のような状況の事業者については、更新ができない恐れがあるので、事前に相談するようにとしています。
(抜粋)
- 直近事業年度において、債務超過であり、かつ直近3事業年度の収支が連続で赤字である場合
- 最低賃金法に基づく地域別最低賃金以上の賃金が支払われていない場合
- 社会保険について直近1年分の保険料の納付が確認できない場合
- 行政処分を受けたのち、運輸安全マネジメント評価を受けていない場合
- 前回更新日の翌日から申請時まで毎年連続行政処分を受けている場合
これから見ると、債務超過は一つの判断基準になりそうだと推測できます。これを機会に、自社の決算書を見直してみましょう。
まとめ
許可更新制の導入の目的について、筆者は次のように推察しています。
トラック協会や運輸局も保有車両台数5台未満の事業者が多く存在していることを把握しています。このような事業者では、安全投資も行っておらず、安い運賃の温床になっていると考えられています。まともに法令遵守し、安全投資を行っている事業者がこのような事業者の運賃と比較されることにより、適正な運賃がもらえていない状況は、業界の健全な発展のために見直しが求められていると考えられます。
これまで、一度取得すると取り消しにならない限り継続できた事業許可を、取得時の条件を維持できていることを最低条件にして、ふるい落としていくことがまず、第一の目的と推察されます。
次に、事業会社において、トラックドライバーの確保のために、他業種並みの処遇に上げることがあります。債務超過で赤字が続くような事業者では、ドライバー処遇改善は難しくなります。そのために、財務内容が更新要件に含まれていると考えられます。
つまり、政府はルールを守らず、安全を担保できない事業者を排除し、不適当な運賃競争を無くすことで、ドライバーの処遇改善を果たし、我が国の輸送力を確保しようとしていると言えます。
従って、事業者は、適正な運賃を収受し、適正な利益を確保した上で、ドライバーの処遇改善に努めることが求められているということになります。 この機会に自社の状況を再点検し、安全を確保した上で、財務改善に取り組むことをお勧めします。
今からできること
すぐにできることを3つ提案します。
- 運転日報や点呼記録簿、整備記録簿は正しく作成され、保存されているかチェック
(これを機会にデジタコ等のDX化も検討することをお勧めします) - 自社の財務状況が健全なのかをチェック
(トラック協会や商工会議所、取引銀行等に相談してはどうでしょうか) - ドライバーとのコミュニケーション
(ドライバーが職場に求めていることを把握するため、会話の機会を増やすことをお勧めします)



